『決算書理解講座29 資金繰り⑦』
今回のテーマは
『決算書理解講座29 資金繰り⑦』について
決算書理解講座28では『資金繰り⑥』で「資金の減少がない経費」
について説明しました。
今回は『資金繰り⑦』として、「商売で資金を稼いでいるか」について
説明したいと思います。
会社の資金はどうすれば増えるか・・・、どうすれば減ってしまうのか・・・
それぞれに要因があります。
これまで、資金計算書を作成し、資金が増えた原因、減った原因を
探ってきました。
いくら商売で儲かっていても、それが売掛金のままであったなら、「勘定合って
ゼニ足らず」となります。
資金が不足すれば、借金をすることもあるでしょう。
何故、借金が増えたのか・・・
売上の入金が少なかったからなのか、それとも、何か大きな買い物をし、
設備投資をしたからなのか・・・といったことを明らかにしてくれるのが
資金計算書となります。
(例題)
B/S<当期> 単位(百万円)
現金預金 | 85 | 支払手形 | 100 |
売掛金 | 100 | 買掛金 | 80 |
商品 | 80 | 借入金 | 1,000 |
建物 | 400 | 資本金 | 300 |
土地 | 1,000 | 未処分利益 | 185 |
1,665 | 1,665 |
B/S<前期> 単位(百万円)
現金預金 | 45 | 支払手形 | 90 |
売掛金 | 70 | 買掛金 | 110 |
商品 | 60 | 借入金 | 950 |
建物 | 420 | 資本金 | 300 |
土地 | 1,000 | 未処分利益 | 145 |
1,595 | 1,595 |
損益計算書 単位(百万円)
売上高 | 1,000 |
売上原価 | ▲800 |
売上総利益 | 200 |
営業費 | ▲140 |
営業利益 | 60 |
営業外費用 | ▲20 |
当期利益 | 40 |
この場合の資金計算書を作成してみると、
<Ⅰ 経常資金収支>
1.売上による資金収入:970・・①
売上高 1,000、売掛金の増加 ▲30
2.仕入のための資金支出:▲840・・②
売上原価 ▲800、支払手形の増加 10、買掛金の減少 ▲30、
商品の増加 ▲20
販売活動による資金収支(①-②):130・・③
3.営業費による資金支出:▲120・・④
営業費 ▲140、減価償却費 20
4.営業外資金支出:▲20・・⑤
営業外費用 ▲20
経常資金収支(③+④+⑤)▲10・・⑥
<Ⅱ 財務資金収支>
1.財務資金収入:50・・⑦
借入金の増加 50
財務資金収支(⑦):50・・⑧
<Ⅲ 総合資金収支>
経常資金収支(⑥):▲10
財務資金収支(⑧): 50
資金増加(⑥+⑧): 40
この会社のバランスシートでは前期の現預金が45百万円、当期の現預金が
85百万円となっており、40百万円の現預金が増えています。
その要因ですが、経常資金では10百万円不足しましたが、財務資金で
50百万円を賄い、結果的に40百万円の現預金が増えた、ということを
物語っています。
この会社は当期、10億円の売上高を達成しましたが、売掛金が30百万円
増えたので売上による資金収入は9億7,000万円に留まりました。
一方、仕入関係ですが、売上に対する売上原価は8億円でしたが、在庫が
20百万円増加し、買掛金が30百万円減少したので支払手形は10百万円
増えたにもかかわらず、仕入のための資金支出は8億4,000万円となりました。
つまり、損益計算書上の粗利は2億円計上されているが、資金に限って
見ると1億3,000万円しか稼いでいない、となります。
次に営業費ですが、損益計算書上では1億4,000万円計上されていますが、
その中には資金の支出を伴わない減価償却費が20百万円あり、資金支出を
した営業費は1億2,000万円となります。
従って、営業段階での資金増は10百万円ということになり、金利支払い
(営業外費用)の20百万円を差し引いた経常収支は結局10百万円の
マイナスになったことが読み取れます。
ボリュームが多くなりましたが、少しはご理解頂けましたでしょうか。
次回は、「赤ランプの見分け方」について説明したいと思います。
お楽しみに!
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