『融資の知識を身につけよう
~資金使途編 運転資金~』
金融機関へ融資の依頼をする際、まず、資金使途を聞かれますよね。
「運転資金です」とはいうものの、なぜ運転資金が必要なんですか?と聞かれると回答できないといったケースも多いのではないでしょうか?
そこで、今回は運転資金について書いてみたいと思います。
運転資金とは・・・
運転資金は、通常の営業活動に伴って生ずる資金需要のことで、言いかえると営業活動に伴う「商品及びサービス」の流れによって生ずる資金需要のことを言います。
例えば、自動車のディーラーが車を3百万円で購入して、5百万円で販売するとしましょう。
仕入も販売も現金(振込)で行う場合、同日に決済できるのであれば立替払いの資金は必要ありませんね。
しかし、仕入は購入時現金決済し、販売したお金が1ヵ月後にしか現金で回収できなかったりすると立替払いが必要となります。
また、仕入は購入時現金決済したものの、車がなかなか売れなかった場合、在庫として持ち続けなければならない場合も資金が必要となります。
このような、いわゆる立替払い資金のことを「運転資金」といいます。
また、3百万円で購入した車がなかなか売れず、2百万円でしか販売できなかった場合、1百万円の赤字が発生します。
このような資金を「赤字資金」と呼び、赤字資金も運転資金の仲間に入ります。
所要運転資金の算出
実際の商いでは、現金即日決済ではなく、掛売り、掛買いが殆どです。
そこで、運転資金(立替払い資金)というものがどの程度必要かを見るための算式があります。
所要運転資金=売上債権(売掛金・受取手形など)+在庫-仕入債務(買掛金・支払手形など)
売掛金と受取手形が販売活動により発生する債権で、まとめて売上債権といいます。一方、買掛金と支払手形は仕入により発生する債務なので仕入債務といいます。
売上債権や在庫は資金負担の増加項目、仕入債務は資金負担の軽減項目となるためこのような式で所要運転資金を計算します。
※所要運転資金は月商比で表すこともあるの参考まで
所要運転資金(月商比)=月商比売上債権+月商比在庫-月商比仕入債務
また、決済条件や在庫手持条件などからも運転資金の額を知ることができます。
毎月の販売額:5百万円
毎月の仕入額:4百万円
販売回収条件:月末〆翌月末払い、手形100%(サイト2ヵ月)
仕入支払条件:月末〆当月末払い、現金50%、手形50%(手形サイト2ヵ月)
在庫手持条件:月間仕入額の1ヵ月相当(4百万円)
というケースがあった場合、
売上債権は売掛金5百万円(月商の1ヵ月)、受取手形10百万円(月商の2ヵ月)
仕入債務は買掛金0、支払手形4百万円(月商の0.8ヵ月)
在庫は4百万円(月商の0.8ヵ月分)
となることがわかります。後は、所要運転資金の算出方法に当てはめ、運転資金の額を求めます。
まとめ
仕入・販売が同時に起こり、支払・回収も現金で同時決済し在庫を持たなければ、資金負担(立替資金)は無く、運転資金は不要です。
しかし、営業活動をする上で、在庫を持ち、販売先に一定期間回収を猶予すると(売掛、受手回収)、資金負担が生じ、仕入先から一定期間回収を猶予してもらっても(買掛、支手発行)、その収支ずれなどについて資金手当(借入など)を行う必要が生じ、これが運転資金の資金需要となります。
資金使途の説明する際は、まずは、これらの仕組みを理解しておくことが必要です。
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