『融資の知識を身につけよう~時効~』
時効制度とは、永年続いてきた事実関係を尊重し、たとえその状態が法律的に正当な状態でないとしても、それを正当な法律状態として認めましょう、という制度です。
時効には、一定の事実状態の継続により権利を取得する「取得時効」と、権利を行使できるにもかかわらず、一定期間権利を行使しないことによって権利を失う「消滅時効」があります。
消滅時効の時効期間
<手形債権>
約束手形の振出人に対する権利は、満期日から時効が進行し3年で完成します。
手形貸付は手形債権と金銭消費貸借債権が併存した債権ですが、手形債権として権利を行使する場合にはこの時効期間が適用されます。
<金銭消費貸借債権>
証書貸付や手形債権がこれに該当します。弁済日の翌日から起算して5年で時効となります。
手形貸付は手形債権であり、且つ金銭消費貸借債権でもあることから、弁済日以降4年が経過していたとしても金銭消費貸借債権は消滅しません。
<割引手形買戻代金請求権>
手形所持人(金融機関)の約束手形の振出人に対する請求権は、手形債権でも記載したように3年で時効となります。
手形が不渡りになった場合、金融機関が割引依頼人に対して有する債権は、①それを裏書人に対する遡及権とする場合は1年、②買戻請求権とする場合は5年で消滅します。
時効の中断
消滅時効が成立すれば金融機関の債権は消滅します。
消滅時効は一定期間権利を行使しないと成立するものですが、時効の中断とは、時効が完成して債権が消滅してしまう前に、自己の権利を行使しているという事実を生じさせておくことをいいます。
時効が中断すれば、その時まで進行していた時効期間は効力を失い、その時から新たに時効が進行します。
時効の中断方法
<請求>
請求とは、時効の対象となる権利について、その内容を主張し行使する裁判上及び裁判外の行為をいいます。
裁判外の請求では、法律上は口頭でも良いとなっていますが、配達証明付内容証明郵便で請求するのが一般的。
但し、催告による時効の中断は効力が弱く、催告後6ヵ月以内に、裁判上の請求、差押、仮差押えをしなければ中断の効力が生じない点に注意が必要。
<承認>
承認とは、時効の利益を受けるものが、時効により権利を失うものに対し、自己が債務を負っていることの認識を表示する行為をいいます。
例えば、元本の返済はできなくても、利息の支払いを受けているケースなどでは債務者本人が債務の存在を承認したことになります。
実務的には、債務承認書を債務者より徴求し、確定日付を取るといったことを行います。
<差押、仮差押、仮処分>
これらの3種類があります。
まとめ
個人間の売買や貸付(借金)といった民事債権の時効は5年ではなく10年で時効が完成するなど、債権債務の内容によって時効となる期間が違います。
融資としての知識以外に、商売上の債権債務でも「時効」の知識は持っておいた方が良いと思料します。
ここでは簡単な概略を記載しましたが、詳細は法律の専門家である弁護士などに相談されることをお薦めします!
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