『日本の活力となるか
~続々と設立されるファンドマネー~』
ゼロ金利政策の影響で行き場を模索するマネーですが、金融機関ではファンドを活用し、成長産業や震災復興などへリスクマネーの提供を行おうとする動きが加速しています。
今回は、これらの動きについていくつか見てみたいと思います。
日本風力開発ジョイントファンド
日本政策投資銀行(DBJ)と日本風力開発は、国内の風力発電設備に投資するファンドの運用を始めた。
資産規模は約350億円。売電収益を出資者らに分配する仕組みで、電力の固定価格買い取り制度を生かして高い利回りを目指す。
日本風力開発から15カ所の風力発電施設(風車100基分)を取得。日本風力開発は売却で得た資金を元に発電施設の新規開発を加速させる。
350億円のうち239億円はDBJが融資しているが、今後は地方銀行などからのプロジェクトファイナンス(事業融資)に切り替えるとしている。
事業融資について格付投資情報センター(R&I)からトリプルBの格付けを取得。
DBJと日本風力開発が出資している残りの100億円強についても外部からの出資を募る。
機関投資家が主体となる見通しであるが、東証のインフラファンド市場への上場も検討しており、実現すれば個人投資家も出資可能となる。
こうべしんきんステップアップファンド
神戸信用金庫は、フューチャーベンチャーキャピタルと共同で、雇用創出を目的とする新投資ファンドを創設する。
昨年創設した「地域再興ファンド」(総額5,000万円)で公募・投資した6社の経営が順調に推移している模様で、新ファンドでも投資先の発掘を進めるとしている。
新ファンド「こうべしんきんステップアップファンド」(存続期間15年)は神戸信金が4,900万円、フューチャーが100万円をそれぞれ出資し、計5,000万円でスタート。
新分野への挑戦や事業の拡大で雇用創出が見込める企業を選定し、1社1,000万円を上限に投資する。
神戸信金は資金の効率性を考え、2017~20年度の4年間、前年度の純利益の5%(上限5,000万円)を新ファンドに毎年追加出資する。
追加出資型ファンドは全国的に珍しく、起業家を育成する新たな動きとして注目を集める。
熊本地震復興ファンド
九州フィナンシャルグループ(FG)の肥後銀行(熊本市)は、熊本地震で被災した熊本県の企業を支援するため、総額300億円規模の地震復興ファンドを他の金融機関などと共同で創設。
九州FGの鹿児島銀行(鹿児島市)、日本政策投資銀行などと共同出資する中堅企業以上を対象にした「くまもと復興応援ファンド」(100億円)、鹿児島銀、中小企業基盤整備機構などと共同出資する中小企業などを対象にした「くまもと未来創生ファンド」(50億円)の2つのファンドは、いずれも肥後銀が総額の40%を出資しそれぞれ設立。
また、政府系ファンドの地域経済活性化支援機構や熊本県内の金融機関と共同出資する「熊本地震再生支援ファンド」(上限50億円)と、同支援機構、九州各県の主要行と共同出資する「九州広域復興支援ファンド」(117億円)も立ち上がるなど、復興へ向けた動きが加速している。
小規模企業の事業承継支援ファンド
北海道は北洋銀行、北海道銀行など道内地銀や信用金庫と共同でファンドを設立し、後継者不足に悩む道内の小規模企業の事業承継を支援する。
小規模企業の事業承継に焦点を当てたファンドは珍しく、このファンドの設立は、北海道が施行した「小規模企業振興条例」に基づく事業となる。
2017年2月の設立を目指し、規模は5億円程度となる見込み。
具体的には後継者不足に悩んでいる小規模企業の株式を1社3,000万円を上限に取得し、中小企業診断士などを派遣する。
支援する期間は最大10年で、事業承継が軌道に乗った段階で派遣を終わらせ、新しい経営者に株式を買い戻してもらうとしている。
北海道や金融機関はこの事業をモデルケースに位置付け、市町村や各地の信用金庫が主体となって地域ごとにファンドを設立するなど、全道的な支援事業の拡充に結びつけたい考え。
まとめ
茲許、地方銀行の動きにフォーカスされた情報が飛び交っていますが、地方銀行にとって中小企業への資金提供は重要な業務であり、また、中小企業にとって地方銀行は大切な資金調達先の1つとなっています。
マイナス金利政策の導入で収益確保に苦しむ金融機関が増えていますが、生き残っていくためには、まず、金融機関の顧客となる企業が儲かる形となることが重要です。
融資では難しいリスクテイクをファンドを通すことでリスクマネーを供給しようとする動きは良い方向に向かっていると思料します。
ただ、これらの資金を活かすことができるのか、また、リスクに立ち向かう経営者がどれだけチャレンジできるかも重要です。
この記事へのコメントはありません。