『決算書理解講座50 借入の形態と特色』
決算書理解講座49では「在庫の回転」について説明しました。
今回からは、「資金調達の種類と特性」に入り、まずは「借入の形態と特色」について説明したいと思います。
金融機関からの借入れは、手続きが比較的簡単で機動的な資金調達が可能となるため企業においては最もポピュラーな資金調達手段となっています。
資金コストは期間、担保の有無などにより異なるほか、短期・長期のプライムレートを基準とした変動・固定金利によるものや、金利スワップなども組み合わせたものなども増えてきている。
<借入の形態と特色>
■手形貸付(単名手形)
・資金使途は圧倒的に運転資金が多い。
・返済方法は期限一括返済が多い。
・貸付利息は前払いのケースが多い。
■証書貸付
・設備資金や長期運転資金の借入に利用される。
・長期にわたるものが多いため、分割払い方式が圧倒的に多い。
・事業計画や収支予算が重要となる。
■当座貸越
・主として運転資金ないし当座の資金として利用される。
・限度があるため、その範囲内の利用となる。
■インパクトローン
インパクトローンとは、資金使途が全く規定されていない外貨借入(使途制限があるものはタイド・ローンという)で、外国為替公認銀行の外国為替取扱店のみで取り扱える性質の資金調達方法。
企業が多額の外貨建て債権を持っている場合などでは、円高による為替差損発生リスクが存在する。
リスクヘッジの手法はいくつか考えれられるが、外貨建て借入もその1つで、為替変動による影響を借入金と債権とで相殺することで為替差損の発生を吸収する、というもの。
■スワップ取引
スワップ取引とは、自らが保有する負債を他人の持つ負債と交換することで、両者が利益を享受できるような仕組みとなっている。
スワップ取引には、①金利スワップ、②通貨スワップ、③カクテル・スワップ(金利スワップと通貨スワップの組合せ)などがある。
■抵当証券ローン
抵当証券とは、土地、建物及び地上権を対象とする抵当権付債権を有価証券にしたものであり、抵当証券会社が債務者(または抵当権設定者)の同意を得て登記所に交付申請し、登記所によって発行される。
抵当証券による資金調達の主なメリットとしては、
・超長期(最長25年程度まで)安定資金を調達できる。
・資金使途の制限がなく、長期運転資金や設備資金、既存借入金の肩代わりに
利用されることもある。
■リース
リース会社が所有する設備などにリース料を支払うことにより賃貸使用することから「物融」とも呼ばれるもの。
【ファイナンス・リース】
購入資金を借りる代わりにリース物件そのものを賃貸料を支払って借りるもの。
最も一般的に利用されているもので、期間中、当事者は解約できない仕組みとなっている。
【オペレーション・リース】
リース期間中でも利用者が自由に申し出れば中途解約ができる形態のリース。
期間の満了を待たないでリース物件の返却ができる。
他にも、社債の発行や増資(新株式の発行)、割引手形、ファクタリング(債権買取)、支払条件の長期化・回収条件の短期化、など資金調達手段という分野は幅広にあります。
ご理解頂けましたでしょうか?
次回は、今回の説明に折り込んでいない「私募債」について説明したいと思います。
お楽しみに!
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