『決算書理解講座51 私募債』
決算書理解講座50では「借入の形態と特色」について説明しました。
今回は、「資金調達の種類と特性2」として、「私募債」について説明したいと思います。
私募債のメリット
まずは、私募債の特徴を理解するため、銀行借入と比較した場合のメリットなどについて見てみたいと思います。
■長期安定資金の調達
運転資金を銀行から融資を受ける場合、融資期間は3~5年というものが多いのですが、社債の場合、6、7年といった期間で且つ、満期一括償還による長期安定資金を確保出来る点がメリットとして挙げられます。
また、満期時に借換債を発行すれば、自己資本に近い性格の資金とすることも可能。
■低コストの資金調達
社債は直接金融の一手段であり、資本市場から直接調達を行うため、間接コストが削減される仕組みとなっています。
コストは表面利率に手数料などを加えた総コストで考えなければなりませんが、利息の支払い方法が後払いである効果や、長い期間の資金調達ができるといった点を考慮すれば、銀行借入に比べ、資金調達コストは低い資金とも言えます。
■対外的なPR効果
銀行借入にはない私募債の機能として、対外的PR効果がある、という点が挙げられます。
具体的には「厳しい適債基準をクリアした企業のみが発行できる」といった点や、「発行の事実が対外的に公表される」という2つのルールによる効果があります。
規模や財務内容とも一定水準以上の会社のみが発行できることから、「発行の事実」=「優良企業の証明」とも言える訳です。
また、自社の財務内容が優良である点をPRすることにより、社内の士気高揚や人材確保にも好影響が期待できます。
発行者コスト
次に、例題を基に発行者コストの算出方法について見てみたいと思います。
(例)
発行額 :1億円
期間 :7年
償還方法:期日一括償還
利率 :2%
発行価額:額面100円につき99円45銭
①募集委託手数料:発行額100円につき30銭
②引受手数料 :引受額100円につき1円
③当初登録手数料:当初登録額100円につき10銭
④担保設定費用 :発行額の1,000分の4(不動産抵当)
⑤利息支払手数料:利息支払額100円につき60銭
⑥元金償還手数料:元金償還額100円につき40銭
⑦信託報酬 :社債残高100円につき年間25銭
上記条件を前提とした場合の発行者コストは
A:発行差金(発行額-発行価格×発行額)・・・ 550,000円
B:発行時費用(上記①~④) ・・・ 1,904,000円
①発行額×0.3%+消費税:324,000円
②発行額×1.0%+消費税:1,080,000円
③発行額×0.1%:100,000円
④発行額×0.4%:400,000円
C:期中費用(上記⑤~⑥) ・・・ 2,412,720円
⑤支払利息×0.6%+消費税:90,720円
⑥償還金額×0.4%+消費税:432,000円
⑦社債残高×0.25%×年限+消費税:1,890,000円
D:支払利息(発行額×利率×期間) ・・・14,000,000円
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E:費用合計(A+B+C+D) ・・・18,866,720円
F:年当り費用(E÷期間) ・・・ 2,695,246円
G:当初手取額(発行価額総額-B) ・・・97,546,000円
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発行者コスト(F÷G×100) ・・・2.763%
といった計算で発行者コストを算定します。
ご理解頂けましたでしょうか?
次回は、「増資・ストックオプション」について説明したいと思います。
お楽しみに!
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