『中小企業の事業承継
~円滑な承継とそのポイント~』
事業承継には自社株対策も必要であることをこれまでも説明してきましたが、今回は事業承継を円滑に行うためのポイントを整理してみたいと思います。
現状の把握
企業の現状を把握した上で計画を立てる必要があり、ポイントと考えられる点は、
①後継者の決定及び教育
②資本政策(株主構成)
③事業の将来性、多角化や事業転換の必要性
④企業の人材
⑤当面の最重要事項とそれを対処する計画
⑥設備投資の必要性、直、資金繰り
など
計画期間の設定
経営者の年齢、後継者の育成期間などによってこの期間は長短さまざまですが、ある程度の長い期間(5~15年)をかけることが望ましい。
事業承継の基本スキーム
現状把握や計画期間の設定などを十分に踏まえ、財産の状況、相続人の相互関係、オーナーの持株シェア、更には株価を考慮した上で総合的に判断する必要があります。
△ステップ1:株価の計算・把握
まずは、自社の株価を計算することからスタートすると良いでしょう。
株価を計算する目的は、
・自社の資産価値を知り相続税額を把握し、対策の必要性や緊急性を認識すること。
・株価を高くしている要因を掴み、対策を考えるための資料とする。
ことなどが挙げられます。
△ステップ2:株価引下げ策の検討
株価引下げ策としては、売上高、総資産、従業員数を増加させることで会社区分をランクアップし、純資産価額よりも低い評価となる類似業種比準価額の適用割合を高くするといった方法や、役員退職金は支払うことで利益金額、純資産額を減らす方法など様々あります。
不動産の取得や会社分割などの方法で株価対策を行う場合は、将来の企業経営に大きな影響を与えることにもなるので、自社の事情などを踏まえ慎重に検討する必要があります。
△ステップ3:後継者への移転方法の検討
一般的に業績の良い会社は内部留保も年々増加するので、株価も年々上昇するのが普通です。
そこで、株価引下げだけでなく、株式の後継者への移転方法の検討も重要となります。
ポイントとしては
・株式移転に伴う税金を理解すること。
・将来の株主構成のあり方を念頭に置きながら検討すること。
などが挙げられます。
△ステップ4:株式分散の検討
いろんな対策を講じても、株価が依然として高水準にある場合や、時間的制約、資金的制約のために後継者への移転がうまくいかない場合などでは、株式を同族以外へ分散する方法も検討する必要があります。
従業員持株会などを設立し、そこに自社株を持たせる方法などがありますが、経営権の問題が絡むため、株主構成のあり方や経営権の確保の方法についても検討する必要があります。
ご理解頂けましたでしょうか?
次回は事業承継に大きく関わる相続税の基本的な知識を理解していくために、まずは、「相続税が課される財産と課されない財産」について説明したいと思います。
お楽しみに!
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