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『決算書理解講座79 財務分析手法~分配率の検討~』

決算書理解講座78では「財務分析手法~付加価値労働生産性(製造業分解指標)~」について説明しました。
今回は、「財務分析手法~分配率の検討~」について説明したいと思います。

付加価値の算出方法には、生産高から外部購入価値を控除して算出する控除法と、生産要素への成果配分額の積上げによって算出する加算法の2つがあります。

最もポピュラーな付加価値の算出方法は日本銀行方式で、その日本銀行方式は加算法で算出されています。

日本銀行方式の付加価値構成項目は、
①人件費
②金融費用(支払利息)
③減価償却費
④賃借料
⑤租税公課
⑥経常利益
以上6項目の合計となっています。
(全てを足すと付加価値額となります)

分配率には「労働分配率」や「資本分配率」、「税金分配率」などがありますが、この中で一般的に重要性が高いといわれているのが「労働分配率」です。

労働分配率が重要視される要因として
①付加価値の中で人件費ウェイトが高いこと。
②労働分配率が高いということは、相対的に資本への分配が低くなることを意味する。
③労働分配率を低く抑えることは、従業員の勤務意欲を減退させてしまう。
などが考えられます。

そこで、最も望ましいのは、従業員に対して比較的高水準の賃金を支払いながら、労働分配率を極力抑え、内部留保を中心とした資本分配率を高くするということになろうかと思います。

逆に、従業員の賃金水準が低いにも関わらず、労働分配率が高いというパターンは最も好ましくないパターンともいえます。

 

労働生産性・労働分配率と賃金水準

労働生産性と労働分配率、平均賃金(従業員1人当り人件費)の間には、次のような関係性があります。

労働生産性×労働分配率=従業員1人当り人件費

(付加価値価額÷従業員数)×(人件費÷付加価値価額)=(人件費÷従業員数)

この式が示していることは、賃金水準が上昇する場合、それを
①労働生産性を高めて吸収するか
②労働分配率を高めて吸収するか
ということになります。

労働分配率を高めることは、付加価値に占める構成割合から考えて、収益圧迫要因となるので、積極的な労働生産性の向上策こそが企業にとって重要課題となることがわかります。

それと同時に、労働分配率が傾向的に上昇しているとすれば、長期的にみてその企業の収益性は危険信号だともいえます。

ご理解頂けましたでしょうか?

次回は、「財務分析手法~成長性をみる~」について説明したいと思います。
お楽しみに!

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