『決算書理解講座82 財務分析手法
~各運転資金の所要額検討①~』
決算書理解講座81では「財務分析手法~運転資金とその種類~」について説明しました。
今回は、「財務分析手法~各運転資金の所要額検討①~」について説明したいと思います。
まずは、基本的な経常運転資金の所要算定ですが、
①残高ベースからの把握(基本算式)
売上債権+棚卸資産―仕入債務
②回転期間ベースからの把握
平均月商×(売上債権回転期間+棚卸資産回転期間―仕入債務回転期間
から所要額を算定します。
次に増加運転資金ですが、資金需要の要因としては
・売上の増加
・取引条件(売掛・買掛期間、手形回収率及び手形支払率、手形サイト)の変化
の2つが考えられます。
これらの要因をもとに所要額の算出方法として次の3つがあります。
①売上が増加した場合(回転期間は不変)
増加運転資金所要額
=平均月商増加額×(売上債権回転期間+棚卸資産回転期間+仕入債務回転期間)
(=従来の経常運転資金×売上高増加率)
②回転期間が変化した場合(売上は不変)
増加運転所要額
=平均月商×収支ズレの変化(※)
※(回転期間変化後の収支ズレ―従来の収支ズレ)
③売上と回転期間がともに変化した場合
増加運転資金所要額
=(平均月商増加額×従来の収支ズレ)+売上増加後の平均月商×収支ズレの変化)
(売上増による増加分+回転期間の変化による増加分)
もう少しわかりやすくするために、次の例題から増加運転資金の算出を
してみたいと思います。
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(例題)
年間売上高 :240百万円
売上債権回転期間:3ヵ月
在庫回転期間 :1ヵ月
仕入債務回転期間:2ヵ月
次のように変化した場合の増加運転資金は?
①売上高が264百万円へ増加
②売上債権と在庫の回転期間がそれぞれ1ヵ月長期化
③①と②が同時に変化
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①平均月商=240÷12=20百万円、平均月商増加額=264÷12―20=2百万円
収支ズレ=3ヵ月+1ヵ月―2ヵ月=2ヵ月
増加運転資金=2百万円×2ヵ月=4百万円
②収支ズレの変化=(4ヵ月+2ヵ月―2ヵ月)―2ヵ月=2ヵ月
増加運転資金=22百万円×2ヵ月=44百万円
③増加運転資金=(2百万円×2ヵ月)+(22百万円×2ヵ月)=48百万円(※)
従来の経常運転資金=20百万円×2ヵ月=40百万円
変化後の経常運転資金=22百万円×4ヵ月=88百万円
※は88百万円と40百万円の差額
ご理解頂けましたでしょうか?
次回は、「財務分析手法~各運転資金の所要額検討②~」について説明したいと思います。
お楽しみに!
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