『中小企業の事業承継
~法人成りによる事業承継対策~』
法人成りとは、従来個人で経営していた事業を、新設した法人の営業に切り換えることをいいます。
個人と法人では税務上別人格となるため、法人成りを行うに際しては次のような税務処理が必要となります。
<個人について>
個人については、次の所得に対する所得税、住民税、事業税が問題となります。
①その年の1月1日から事業の廃止の日までの事業所得
②法人成りに伴って個人が法人に引き継いだ資産にかかる譲渡所得
③法人成りの後に法人から受ける役員報酬、不動産などの賃貸料などにかかる所得
<法人について>
法人については、事業の開始事業年度中の所得に対する法人税、法人住民税、法人事業税が必要となります。
法人成りに伴う事業用不動産の処理
自動車やその他の資産の譲渡は譲渡価額と簿価に差額があっても小さいものに留まる事が多いことから課税上の問題は生じにくい。
一方、事業用に供していた不動産を新設会社に引き継ぐ際は、個人と法人の取引となるため、時価による譲渡が行なわれないと課税上の問題が起こります。
簿価と時価との乖離が大きい場合、会社に引き継がず、個人が会社に賃貸し、地代家賃を受け取るなどで対応するケースが多い。
法人成りにあたり、事業用不動産を会社に現物出資することを検討することもありますが、現物出資も譲渡の一形態であるため、譲渡所得課税は免れられないことに注意して下さい。
法人成りと事業承継対策
法人成りすることによって、それ以降の事業から生じる所得は法人のものとなり、社長にとっては、役員報酬や不動産の賃貸収入などのみが財産の増加要因となります。
また、新設会社の資本を妻や事業の承継予定者に持たせておくと、会社の業績伸長とともに株式・出資の評価額は高くなることを通じて、直接、株主・出資者である後継者なり家族の財産が増えることになります。
事業に従事する家族の財産蓄積
個人事業の場合でも、青色申告者については青色事業専従者の制度があり、また家族従業員については事業から給与をもらう方法がありますが、相当な制限もあります。
法人成りの後では、それぞれの家族従業員に対して、その働きに応じて適切な役員報酬や給与を支払うことが可能となり、賞与や退職金の支払もできるため、計画的な資産形成がしやすいといえます。
妻や事業承継者が自己の資産を形成することは、相続税対策にも大きく寄与することにも繋がります。
ご理解頂けましたでしょうか?
次回は「社長急死の場合の事業承継」について説明したいと思います。
お楽しみに!
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